酸ヶ湯薬師 – 温泉と薬師信仰

以前、「国道103号 酸ヶ湯界隈の冬」、「酸ヶ湯温泉 雪のトンネル」でもご紹介した酸ヶ湯温泉は、八甲田山中にある国民健康保養温泉第一号に指定された温泉です。
一軒宿である酸ヶ湯温泉旅館は旅館部、湯治部を要する大きな旅館で、年間を通じて多くの観光客、湯治客で賑わっています。

「雪のトンネル」の入口にもなる酸ヶ湯南口は、旅館から300mほど国道を進んだ先、酸ヶ湯公共駐車場の向かいにあります。

冬は3mを越える積雪に覆われる階段も、夏場はこのとおり。

それが真冬にはこの状態。とても同じ場所とは思えません。

そして酸ヶ湯南口のすぐそばに、鳥居が立てられています。国道103号からもよく見えます。

「薬師神社」の扁額を掲げた鳥居は無垢の丸太を組み合わせたもので、笠木には太く逞しい材が用いられています。

鳥居の傍らには、「奉納 薬師神社」と刻まれた石碑もありました。

扁額は比較的新しい感じがします。

鳥居をくぐると、ハイキング道のような参道が続きます。

茂みに囲まれた参道を少し歩くと、社が見えてきます。

茂みの中にひっそりと立つ社。

温かみのある「酸ヶ湯薬師」の揮毫は、「薬師寺 太胤」の署名があります。奈良薬師寺の村上太胤副住職の書のようです。

軒下にも同じ書の扁額が掲げられています。

酸ヶ湯温泉は、1684(貞享元)年、横内村(現在の青森市横内)の猟師左衛門四朗が山中で鹿を仕留め損ねたおり、手負いの鹿がその数日後に何事も無かったかのように逃げ去ったことから不思議に思い、鹿のいた辺りを調べると湯が涌きだしていたのを発見したのがはじまりとされています。
鹿が傷を湯で癒していたことからこの湯は「鹿湯」とよばれ、それがいつしか転訛して「酸ヶ湯」と呼ばれるようになったという言い伝えが残されています。そして左衛門四朗が祠を造営して鹿を祀ったのが、この酸ヶ湯薬師の由来とも言われています。

酸ヶ湯温泉旅館では、有名なヒバ千人風呂の浴室にも神棚が安置されており、薬師様が祀られています。

冬場は雪に閉ざされ参拝することのできない薬師神社。

それ以外の季節も訪れる人は少ないのですが、湯治の折に医薬の仏である薬師様にお参りし、平癒祈願をするのも良いかもしれません。

 

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