浅間山登山記 その1

6月5日の土曜日、浅間山へ登ってまいりました。

それなりに山を歩ける装備というのは用意していますが、別に山を歩く事は趣味ではありません。
花やきのこ、廃墟、温泉(野湯)があるからこそ、わたくしは山へ分け入るのであって、「山へ登る」のは、あくまで手段なだけで目的ではないのです。

そんななかで、浅間山は別格でした。子供のころ、鬼押し出しの溶岩地形に圧倒されて以来、わたくしは火山、とりわけ浅間山のとりこになりました。
いつも麓から噴煙をたなびかせる頂を眺めながら、いつかはあの場所へ、という思いをずっと持っていました。
日本で一番好きな山はと問われれば、わたくしは迷うことなく富士山ではなく浅間山を選びます。
つまり、そういう特別な山なのです、浅間は。

しかしながら、浅間山は本邦きっての活火山。つい最近も小規模噴火が起きるなど、危険度の高い山でもあります。ここ数年は警戒レベル2という、火口から半径2km以内立入禁止の制限が行われていましたが、今春久しぶりに警戒レベルが1(火口から半径500m以内立入禁止)に緩和されました。

この機会を逃したら、またいつ警戒レベルが上がって登れなくなるかわからない…。そう考えてたらいても立ってもいられず、日ごろの運動不足も省みず、頂を目指して山を登る事にしたのでありました。

今回の行程(青線)

現在登山が認められているルートには、麓の天狗温泉浅間山荘から蛇堀川の谷沿いに火口原まで登り詰める「火山館コース」と、車坂峠から第一外輪山の黒斑山を越えて火口原にいたる「黒斑山コース」があるのですが、今回は直前の天候が今ひとつで、黒斑山コースは外輪山から火口原に至る「草すべり」、「Jバンド」といった箇所が傾斜が急で厳しそうだったので、麓から登りつめる火山館コースをとりました。

5:39 天狗温泉浅間山荘現在地

最初のうちは車も通れそうな林道でした。橋も立派です。橋から蛇堀川を眺めると、鉄分を含む水脈らしく毒々しいまでの赤色に染まっています。

次第に道が狭くなり、だらだらと続く上り坂に少し息が上がり始めると、最初のポイント一ノ鳥居です。

6:03 一ノ鳥居現在地

ここから次のポイント二ノ鳥居まで、ルートが二手に分岐します。一方は沢を離れて直接ニノ鳥居に向かうルート。
もう一方は沢沿いに進み不動滝を経由して二ノ鳥居に至るルート。やはり滝が眺められる方が人気があるようなので、わたくしも倣って不動滝方面へ進みます。

途中には、何箇所か薪が積んであります。山頂とのちょうど中間地点にあたる休憩施設でコースの名前にもなっている「火山館」の暖房に使用するための薪で、登山者が善意で少しずつ持って登るおやくそく。わたくしも一本ですがリュックにくくり付けました。

しばらく進むと水音が大きくなり、不動滝に到着。

6:21 不動滝

滝があるという事は段差があるということでして、ここから二ノ鳥居までは急な登り。本格的に息があがってきます。
フーフー言いながら二ノ鳥居着。ここで初めてリュックからペットボトルを取り出して水分補給。

6:28 ニノ鳥居現在地

ここから先は勾配が急になります。登山系のサイトなどを見ていると、「『火山館コース』は傾斜もきつくなく日帰りのファミリー登山にも適しています」とか書いてあるんですが、「何言ってるの(怒)」という感じ(涙)

いやもうキツいキツい。

ぜーはーぜーはー言いながら登っていくと、山の住人と遭遇。

カモシカです。

奥大井で見かけて以来だから一年ぶりくらいですかね、カモシカ。
かなり生息しているらしく、目撃談も多数。もう少し先にはカモシカ平という場所もあるくらいなので、あまり珍しくはないのですが、最初尻だけ見えて、一瞬ツキノワかとドキッとしたもので。熊除け鈴は持っていたけどリュックにしまったままだったんですよね(涙)

さらに歩を進めると、ようやく花が。今年はやはり春が遅いようで、あとで火山館のご主人に伺ったところ、二週間くらい花暦も遅れているのだとか。なのでこれまで目だった花は観られなかったので、ちょうど疲労がこみ上げてきたところでもあったので、大いに和みました。

ハクサンイチゲ。

ここから数分で、カモシカ平です。ここではカモシカは見かけませんでしたが。

7:07 カモシカ平現在地

振り返ると突兀とした山容が。牙山(ぎっぱやま)です。
言いえて妙。

次第に蛇堀川の源流が近づいてきます。源流域は噴気帯になっていて、硫化水素ガスが漂っています。私のような人間にはある意味地獄ではなくて極楽なんですが(笑)

斜面から鉱水が湧出し、鉄分を含むらしき析出物が噴湯丘のような景観を形作っていました。噴気もあるし温泉かな?と思い悪い虫が疼きましたが、あとから火山館のご主人に聞いたら「冷たい」とのこと。いや、冷泉は冷泉で良いんですが、まだ時期的に早い…とか思い、そのままスルー。まあ「登山道以外に入るな」とも書いてありますしね。

この噴気帯を越えればもう火山館は目の前。ようやく中間地点に到着です。

7:22 火山館現在地

リュックに積んでいた薪を下ろしてしばし休憩。

約1時間40分は、標準コースタイム2時間に比べたらまあまあのタイム。でも、ここから先が大変なのだとは、この時点ではまだ知らぬわたくしでありました。

つづく。