晴遊閣大和屋ホテル 夢のゴンドラ

国道1号を箱根湯本から上ってゆくと、宮ノ下あたりは富士屋ホテルを核に多くの商店が並び観光客で賑わいます。
そんな宮ノ下の街の片隅に目を引く看板が。

あふるゝ温泉 堂ヶ島渓谷入口。

堂ヶ島温泉は箱根七湯にも数えられる温泉で、早川の谷底に位置しており、対星館と晴遊閣大和屋ホテルという二軒の宿がありました。

堂ヶ島温泉行き自家用ロープウェー 夢のゴンドラ。

宮ノ下の街は山上にあり、早川沿いの堂ヶ島までは相当の高低差があります。
そのため、晴遊閣大和屋ホテルはロープウェー、隣の対星館はケーブルカーを自家用に建設し、国道1号からのアプローチに利用していました。

看板の前あたりの国道から分岐する坂道を下ると案内看板が。
上の看板では「ロープウェー」とされていましたが、こちらでは「空中ケーブルカー」と書かれています。

立派なホテルの看板です。ここからは軽自動車一台通るのがやっとの狭い道となります。
そしてちょっと歩くとすぐに駅が見えてきます。

傾斜地にへばりつく様に立てられた駅。

「夢のゴンドラのりば」の文字が味わい深いですね。

こちらのロープウェーはちゃんと索道事業者としての許可を得ています。

手書きの安全報告書もきちんと掲示。

待合室には、いかにも「待合室の椅子」といった風情のビニール皮革張りの長椅子。
そして壁掛け扇風機。

最急勾配が30度ほどある索道なので、乗り場の階段も勾配がとても急になっています。
ちょっと足を踏み外したら正面の運転室まで一気に転げ落ちそうです。

最上部。支索一本、曳索二本の三線往復式。
索道の形式としては三線往復式は珍しくここでしか見られないのではなかったかと思います。

ゴンドラがやってきました。運転室からは下の駅の様子がモニターで映し出されており、お客さんがくると無線で案内をしてゴンドラを操作します。

ダンパー装備で揺れ対策も万全。

搬器のデザインは愛らしい丸みを帯びたもので、リベット止めや標識灯に時代を感じさせます。

搬器の出入口は折り戸。間口は狭く天井も低いので、大人の乗り降りには身をかがめる必要があります。

“Yamatoya Hotel”のモダンなロゴをデザインした赤い搬器。
前後の窓は突き出し窓になっており、夏場はオープンになっています。それ以外の窓は嵌め殺しです。

車内は狭いながらも定員5名。
ビニール皮革のちいさな椅子が向かい合わせに設けられています。

搬器から転落しないよう、乗車中は錠前をかけて開かないようにします。

積載量420kg。小柄な割りに意外と積めます。

山を下りるゴンドラ。横っ腹には「夢のゴンドラ」とかかれています。ゴンドラの下にある二本の索は、循環している曳索です。

 

下の駅。こちらの駅は無人です。
上の駅の運転室でモニタ監視しているので、もし搬器が上の駅にあっても、すぐに下へ回送してくれます。

それにしても愛らしいフォルム。

こちらの駅もなかなかの勾配です。

上の駅と同じご案内が掲示されています。

こちらも斜面にへばりつくように立てられています。

側面には大きく「大和屋ホテル」の文字。
はるか上方に見える上の駅との高低差がお分かりいただけるかと思います。

大和屋ホテルは和風な造りの大型旅館。

昭和を感じさせる造作がところどころに見られました。

名物の露天風呂。お湯は無色透明でさっぱりした感触。よく温まる良い湯でした。
かつてスティービーワンダーも入浴したことがあるそうで、中ほどにある石のところには「スティービーワンダーさんがすわられた場所」という看板も立てられていました。

ところがこの晴遊閣大和屋ホテル、2013年8月末を以って営業を終了してしまいました。
私が乗ったのも、実は営業最終日。2,000円という少々お高めな日帰り入浴料金に二の足を踏んでいたのですが、営業終了ときいていてもたってもいられず訪問した次第です。

ホテルは完全に営業を終了したわけではなく、リノベーション後に再オープンするそうなので、その折にはこのゴンドラにもぜひとも復活してもらたいたものです。

ホテルの売店をのぞいていたら、お土産袋がゴンドラをあしらったものだったので、買い物のついでに一枚お分けいただきました。

売店で買ったのがこちら。
夢のゴンドラの携帯ストラップです。

下に添えたメモ帳は、やはりゴンドラのイラストが描かれています。こちらも買い物のときにフロントの方に無理を言って分けていただきました。

このように夢ゴンドラは大和屋ホテルの顔として愛されてきたのですね。

いつか復活することを願い、再び夢のゴンドラに乗れる日を楽しみに待ちたいと思います。

 

場所はこちら(現在は営業していません)


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