国道289号 甲子トンネルの変状

福島県中通りの白河市と会津の下郷を結ぶ国道289号は、甲子峠区間で未整備の状態が長く続いていました。
この区間は登山道が国道に指定され、甲子温泉から先の登山道に通称おにぎりと呼ばれる国道標識が設けられていたことで、国道(酷道)ファンの間では有名な存在でした。

長年の夢であった甲子峠を貫く隧道は、甲子道路の第二工区として1995(平成7)年度に事業化、1998(平成10)年度に着工。そして2008(平成18)年についに貫通し、2008(平成20)年9月21日に開通しました。

しかし付近一帯の地盤は不安定なようで、第一工区として先行して1995(平成7)年に開通していた区間にあった石楠花トンネル近辺では、2002(平成14)年7月の台風6号の影響で、地山に雨水が浸透したことから地盤が大きく歪み、トンネルにも変状をきたしたことからこの区間を廃棄し、影響の無かった南側の山中に迂回させ、片見二号橋、片見トンネル、片見一号橋を隔てたきびたきトンネルと地中で接続する新しい隧道を掘削する工事が行われました。

これにより片見トンネル前後の区間は廃道となり、石楠花トンネルも廃止され、長大で洞内が不自然に弓なりのカーブを描く(新)きびたきトンネルが2006(平成18)年に開通しました。

このあたりの経緯や状況は、「山さ行がねが」に詳しいのでそちらをご参照いただければと思います。

旧石楠花トンネルは(新)きびたきトンネルに役目を譲り、いまもコンクリートで塞がれた坑門を見ることができます。

そして2008(平成20)年に開通したばかりの甲子トンネルにも、異常が発見されました。
洞内路面の一部が最大25cmも隆起したのです。

調査の結果、地山に含まれる粘土鉱物「スメクタイト」が水分を吸収することで膨張し、隧道施工による強度低下や地山の緩みなどが複合して変状をきたしていることがわかりました。

現在もなお変状は進行しており、福島県では「甲子トンネル技術検討委員会」を組織し、原因究明や対策工法の検討を進ています。

2013年4月に甲子トンネルを通行した際に、車内にカメラを取り付けて動画を撮影してみました。
簡易的に設置したものなので振動によるブレなどがあり、さらにトンネル延長が4,345mもあるため冗長ではありますが、隆起の現状を確認いただければと思います。
問題の隆起箇所は2:25あたりから。

路肩に「徐行」、「速度おとせ」、「段差あり 通行注意」の警告看板が設置され、隆起している箇所は路肩部分に目印としてカラーコーンが設置されています。
そしてもっとも隆起の大きい箇所は、路面に「減速」の文字が書かれています。
実際にこの箇所を通り過ぎると、車体が前後に大きく揺れ、隆起の大きさを体感できます。

今後の動向が注目されますが、すこしでも早く状況が収束することを願うばかりです。

場所はこちら。


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