青い森鉄道 諏訪ノ平駅と駅便所

前回の「青い森鉄道 北高岩駅と駅便所」に記した通り、青い森鉄道は2002(平成14)年12月4日に東北新幹線の整備区間、盛岡-八戸間が開業した際に、JR東日本 東北本線の青森県区間である目時-八戸間の経営を移管する形で設立された第三セクター鉄道です。

東北新幹線の新青森延伸に伴い、現在青い森鉄道の路線は目時-青森間となっていますが、諏訪ノ平駅は八戸以南の南部町に所在しているため、第一期からの移管区間になります。同じく東北本線の岩手県区間を承継したIGRいわて銀河鉄道との境界駅目時までは、間に三戸駅を挟むだけという立地で、青い森鉄道の中でも南端部に位置しています。

諏訪ノ平駅の開設は1933(昭和8)年1月。既に東北本線は1891(明治24)年9月1日に日本鉄道として開通していたので、昭和初期の開設とはいえ、東北本線の歴史からすると比較的後期に開業した駅ということになります。

駅舎は木造モルタルの平屋建て。特に外見上特徴のある構造ではないのですが、個人的にはこのような駅こそが生活に密着し、保全されて行くべき意義ある資産だと考えています。

駅正面唯一のアクセントとなるのが駅名表示です。「諏訪の平駅」と切抜き文字が入り口上方に掲げられています。当駅の正式名称は「諏訪ノ平」と「の」が片仮名の「ノ」なのですが、なぜか切り抜き文字では平仮名が用いられています。

入り口上部には、「達者村」の看板が扁額のように掲げられています。
青森県南部町は、

『東北新幹線・八戸駅からほど近い山間にある素朴で小さな町、青森県南部町。「住民も訪れた人も心身ともに’達者’になれる」という親しみをこめて『達者村』と呼ばれています。』
※「特定非営利活動法人青森なんぶの達者村」ウェブサイト
http://tassyamura.com/より

とのことで、この看板もそれにちなんで設置さているものと思われます。

駅舎内に入ると、意外と広々としたスペースが広がっています。
四脚一組のベンチが四列。一番後ろの列にはテーブルが設けられています。

ホームへの出入り口左上にはLED式の電光掲示板が設けられていて、そこだけが異彩を放っています。

反対側から。
ちょっとしたコミュニティスペースとして、茶飲み話に花を咲かせることもできそうな感じです。

写真中央、入り口脇にはシャッターがありますが、形状からして以前は売店があったのでしょうか…。

現在は無人駅なので、改札はありません。外へ出ると、駅舎の庇に時代を感じさせます。駅舎の庇とホームの上屋は繋がっていません。降雪期は大丈夫なのでしょうか。南部は津軽に比べるとあまり積雪が多い印象はありませんが、ちょっと心配になります。

庇の裏。

諏訪ノ平駅の駅名標。青い森鉄道の標準仕様です。

ホームへ出てみます。ホームはかつては二面三線だったようですが、中線が撤去され、今は上下線でそれぞれ別のホームを使っています。
跨線橋は比較的新しく建造されたもののようです。

さて、本題の駅便所へ行ってみましょう。駅本屋の正面向かって左手に、こぢんまりとした小屋があります。これが諏訪ノ平駅の駅便所です。

入り口脇の建物財産標をチェック。開業の前月、昭和7年12月の登録になっています。便所1号。
外装はパネルで補修されているようなので、建造から90年近く経過しているものの、古さは感じさせません。

入り口向かって左手には臭突が二本、斜めに突き出ています。
マンホールも二口あり、大便器は二箇所あることがわかります。

裏手は窓も無くやや素っ気無いですね。

それではお邪魔しましょう。
左手には大便用個室がにしつもうけられています。

青い森鉄道のキャラクター「モーリー」が、マナー向上をお願いしています。

右手、駅舎側には朝顔形の小用便器が二つ設けられています。
片方は手摺が設けられたバリアフリー仕様です。

個室の床は木造です。ここに昭和初期の名残を感じることができます。昭和初期の便所なので便器こそ和式ですが、手摺を後付けしてあり、こちらもバリアフリーに配慮しています。

便座には臭いもれ防止の蓋も装備。細かいところまで行き届いていますね。

蓋の中身は…是非訪問してご確認ください(笑)

(了)